向日葵
恐る恐るサチさんの視線を辿るように振り返り見れば、そこに居たのはクロで。


だけども彼は、冷たい瞳のまま、そこにあたしを映し出すこともなくこちらへと足を進めてきて。



「さすがはサチだね。
五年振りに電話してきたと思ったら、用意周到な。」


「遅刻しないで、って言ったはずだけど?」


「そうやって勝手ばっかで、五年前に姿消した時と変わらないね。」


「そう言う龍司も、他人の分析がお得意なのは相変わらずね。」


一体どんな会話を繰り広げるのかと思えば、何故か二人は少し険悪な様子で。


肩をすくめたように煙草を咥えた相葉サンは、“それで?”と、空気を破る。



「サチが望んでたメンバーは揃ったんじゃない?
早いとこ面倒なことは終わらせてくれると有り難いんだけどな。」


何故あたしがこんな場所に呼ばれたのか、未だに理解に苦しむのだけれど。


あたしには全然関係のないことだし、先ほどからクロと目を合わせることもないまま。


まぁ、それもそうだろう、だってあたしは、相葉サンとヤったことになっているのだから。



「ねぇ、龍司。
彼女、可愛いわね。」


「そんなこと言うために呼び出したんじゃねぇだろ?」


「そうね。
海斗の父親は龍司じゃない、ってみんなに言っとこうと思って。」


その言葉に目を見開いたのは、あたしと、そして相葉サンだった。


だけどもクロは顔色ひとつ変えることはなく、“何言ってんの?”と、そう言葉を紡ぐ。



「父親は俺。
それで良いって言ったはずだよね?」


「それは、龍司が勝手に言ってただけよ。
正直嬉しかったけど、でも、アナタが背負うべきことじゃないわ。」


二人の会話の意味を理解出来るほど、話についていくことが出来なかった。


ひどく混乱して視線だけを泳がせてみれば、確かに子供、“海斗クン”は、クロには似ていないけど。



「…どういうこと?」


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