向日葵
そう、咥え煙草で差し出されたのは、コンビニ弁当。


カップ麺よりはマシだと、そう言う智也はいつも、食べ物持参で我が家にやってくる。



「あれから一ヶ月くらい経ったじゃん?
何か今では、全部夢だったのかなって、ちょっと思ったりしてさ。」


夢の中で会うクロはいつも通りで、朦朧として起きた時、たまにその境目がわからなくなることがある。


涙は枯れてしまったのか、もう泣くことはさすがに減ったけど、でも、それで強くなったのかと聞かれれば、答えには困る。


本当に迎えに来てくれる夢を見られるほど、あたしは純粋なんかじゃないし。



「あれだけ人が応援してやったのに。」


「…いや、すいません…」


「良いけどね、もう。
お前ら二人がその結論を出したんなら、別に俺が言うことじゃねぇし。」


諦め半分の智也は、そうため息と共に白灰色を混じらせた。



「クロにはさ、ホント感謝してるってゆーか。
色んな事教えてもらったし、もうそれだけで良いんだ。」


「それは、過去の人になった、ってこと?」


「どうだろうね。
よくわかんないけど、もしかしたらそのうちそうなっちゃうのかもね。」


苦笑いを浮かべてみたものの、彼の顔が変わることはなくて、少しだけ虚しさを覚えてしまう。



「けど、そしたら智也がお嫁さんにしてくれるんでしょ?」


「勝手に俺の人生決めるなよ。
つか、お前なんか普通に拒否だっつの。」


「ひどい男だねぇ。」


「今更わかった?」


智也は今もこうやって、親友として、あたしを励まし続けてくれている。


智也が居なかったら、あのまま涙の海で溺れて死んでたりしたのかもだけど、さすがにあたしも、そこまで馬鹿でもないし。



「やっぱあたし、恋愛とか向いてないや。」


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