御曹司の愛され若奥様~24時間甘やかされてます~
「……あれだけ結婚を嫌がっていたのに、まさか自らすすんで愛妻弁当を作るとは」

鏑木のその言葉は、図星すぎてウッと言葉に詰まるけれど、かろうじて「まだ妻じゃない!」も言い返す。


からかいながらも、鏑木はなんだか楽しそう。


その後、鏑木はすぐに車を出してくれて、私は出来立てで温かいままのお弁当を持って別荘を出た。



平日だけれど、街中は人が多くて賑やかだ。あの別荘にいると、休日でも人の気配がなく、まるで私と陽平くんの二人きりの空間のように思えてしまうから、なんだかギャップがある。



「陽平さんの会社の前までお送りしますね」

ハンドルを握る鏑木にそう言われたから、素直に頷いた。
そう言えば私、陽平くんの会社の場所知らないや。
この間お互いのことを色々教え合ったはずだけれど、まだまだ知らないことも多いんだろうなあ。


「着きましたよ」

その言葉に反応して窓の外に目を向けると、空にそびえる高いビル。大和田貿易グループの本社ビルだ。


路肩で車を停めた鏑木は私に振り返り、「陽平さんにちゃんと連絡してあります?」と聞いてくる。


「車の中で何度もメッセージを送ろうとしたんだけど、何て打ったらいいかわからなくて結局送れてない」

「何をやっているんですか。じゃあどうやって会う気なんですか。社内に入って陽平さんのデスクまで突入する気ですか」

「うるさいなあ。今メッセージ送るわよ」

何て打とうか。とりあえず【今会社の前にいるんだけど、会えますか】という無難な文章を送った。
……だけど、もっと早く打っておくべきだったなぁ。こんなメッセージを今送ったところで、陽平くんがいつ見るかはわからないのだから。


と思ったその時。ちょうどエントランスから彼が出てきた。
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