御曹司の愛され若奥様~24時間甘やかされてます~
「それで、お弁当を用意したと?」
いつものサングラスのせいで目元は見えないけれど、きっとバカにしたような視線を私に送ってきているのは雰囲気でわかる……現に口元が緩く弧を描いている。こいつは私の世話を焼きながら働いている一方、色んなことに対して経験不足な私のことを、たまにこうして笑うのだ。
陽平くんが仕事に行った後、私は彼にお弁当を作ってみた……何の変哲もない、普通のお弁当だけれど。
だけどこれを彼の会社に持っていく手段がないため、鏑木にここまで車で来てもらったのだ。
「よ、喜んでくれるかなと思ったのよ」
「いいと思いますよ。きっと陽平さんもお喜びになります」
うーん、本心で言っているのだろうか? でも、鏑木は私がおかしなことを言っていたりやっていたりすればいつも鋭く遠慮なく指摘してくるから、〝陽平くんが喜んでくれると思う〟という言葉はきっと本当にそう思っていると信じよう。
「普段はお弁当は作ってあげないのですか?」
「忙しくて食べられない日とか、外で急遽食べる時もあるから用意しなくていいって言われてるのよ。
でも最近は繁忙期が過ぎて落ち着いてるって言っていたし、というか食べられなかったらそれはそれで仕方ないからいいのよ。
……私の自己満足かもしれないけど、彼に喜んでもらいたいの」
勝手な想像だけれど、陽平くんならきっと、優しく笑って〝ありがとう〟って言ってくれると思う。
そうしたら私も、絶対に堪らなく嬉しくなる。