騎士団長のお気に召すまま
「では、こういうのはどうでしょうか」


シアンは小さな声でとんでもないことを話す。

それを聞いたアメリアは思わず呆然と口を開けてしまった。

ヘンディーは「そいつは面白いことを考える」と笑うのをこらえた。


「もう、どうなっても知りませんよ」

「そうなれば僕がどうにかしますよ」

「ではシアン様にすべてをお願いしますわ」

「どうぞ、お好きに」


そう笑いあってヘンディーに目を向けると、ヘンディーは微笑んで仰々しく頭を下げシアンと共にその扉をあけた。

同時にあふれ出す光と優雅な音は、月明かりの薔薇庭園とはまるで正反対。本当に同じ場所に存在しているのかと思ってしまうほどだった。

こつりとヒールを響かせながらアメリアは優雅に歩き出す。

その後ろをまるで御者のようにシアンとヘンディーがついて歩く。

そこに貧乏令嬢の面影はなかった。

今ここにいるのは、高貴な令嬢そのものだ。


アメリアを見つけた子息達はその美しさと気高さに目を奪われる。令嬢達もどよめいた。


「あの方は、一体どの家の?」

「あんなにも美しい方がいたなんて」

「お名前は何とおっしゃるのだ?」

「どうして今までいなかったんだ?」


そんな疑問の声があちこちから聞こえてくる。

誰もこの娘があの没落寸前のミルフォード子爵家令嬢とは思いもしないらしい。

「はは、みんな呆然としているな」

ヘンディーは面白いといわんばかりにそんなことをアメリアに囁く。


「で、どこに行く気ですか、お嬢さん?」


アメリアは振り返ることなく答えた。


「主催者の方のもとへ」


その目は静かに怒るミアをとらえていた。

ミアは取り巻きの令嬢達を引き連れて、会場内でもとびきり目立っていた。

ひときわ大きな高笑いをして、非常に機嫌がいいらしい。


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