騎士団長のお気に召すまま
「だってお前、アメリア嬢がいなくなってすごく慌てていただろ? 冷静極まりないお前の焦るところなんて初めて見たぞ」


いいものを見たと言わんばかりの様子でヘンディーは笑う。

一方でシアンは眉間に皺を寄せて苛立ちを露わにして怒鳴った。


「彼女は団員ですから。それに彼女の身に何かあってはミルフォード子爵に顔向けできませんので」

「ふうん? まあ、今日はそういう事にしておくよ」

「ヘンディー」

シアンの眉間の皺がさらに深くなるが、ヘンディーはあっけらかんと笑う。


「さあ、アメリア嬢も無事見つかったことだし、会場に戻ろう。
シアンがいなくなったって会場でお嬢様達が騒いでいたぞ。もてるな、騎士団長どの」

「ふざけているのですか、あなたは」

「本当のことを言ったまでだ」


溜息をこぼしながらもシアンはヘンディーと共に会場に向かって歩き出す。

その後ろをアメリアはついていく。

夜会会場の屋敷は夜の闇の中でまばゆく光り輝いていた。まるで黄金の館だ。

その扉の前にたどり着くと、シアンとヘンディーは足を止めて扉の取っ手を掴んだ。


「覚悟はいいですか、アメリア」


シアンの言葉は、アメリアへの忠告だった。

もう一度この場所に立ち入れば、アメリアは確実にミアの餌食となる。

先ほど以上にひどい仕打ちをされかねないのだ。

それはアメリアもよく分かっていた。

唾を飲み込んで、息を整える。深呼吸をして、それから屋敷の中のまばゆさに目を向ける。


「望むところです」


視界の端に映るシアンがわずかに微笑んだ気がした。

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