騎士団長のお気に召すまま
どっちつかずの反応をするシアンにひとつ溜息を吐いたレオナルドは、「シアン、本当はあの子と婚約するつもりなんだろう?」と資料に目を通しているシアンに問う。


「でなければ、お前があんな提案などして自分の傍に置くなど考えられない」


するとシアンは「戯言はよしてください」と鋭い目を向ける。


「言ったでしょう。僕があのように提案したのはミルフォード子爵を、そして彼女を怒らせるためですよ。そうやってあちらから縁談を断るように仕向けたのです。僕はこのような展開を望んではいませんでした」


それから次の資料を手に取ると目を通す。それから呟くように言った。


「それに今は誰との婚約も考えていません」


「それは…お前が兄上から言われてるっていう、あのミア・キャンベル嬢とも?」


「当然です」


少しだけ資料から目を離すと息を吐き出した。


「今は仕事に集中したいので」


それを聞いたレオナルドは、なんて不器用なやつだと思った。

知略に優れた策士、冷徹なんて呼ばれているのに、こんなにも呟かれた言葉が意地っ張りだ。


「素直になればいいのに」


レオナルドがふっと口からこぼした言葉にシアンはギロリと睨みつけて、温度の低い声で言い放つ。



「懲罰房に行きたいのですか?」


「いいや、結構」


必死になってレオナルドは首を横に振るのだが、それでひとつ思い出した。


「懲罰房といえば、シアン。ひとつ報告だ。守衛のエディを懲罰房送りにした。副団長権限だ」


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