騎士団長のお気に召すまま
それはシアンが騎士達に厳しく言っていることだった。

騎士はその忠誠心にのみ基づいて剣を握らねばならばいい。私怨を持って剣を握れば、己を見失う。本当に守らねばならぬ者を傷付けてしまうのだ。


「あなたは私怨を持ってその剣を握った」


シアンの言葉を聞いたエディはハッと顔を上げて「違います!」と否定した。


「違います、私は、この国を思って…」


「誤魔化しは無意味です。僕は真実しか興味ありません。それにあなたが話していることは全部聞こえていました。決定的な証拠です」


エディは膝から崩れ落ちた。全てを失ったと、呆然と宙を見つめる。


「エディ・ダレル。あなたをこの騎士団から除名します」


その言葉でエディは我に返ったのか「お、お待ちください!」とシアンに訴えかけるが、無意味だった。

シアンが片手をあげると衛兵達がやってきて、エディの腕を掴むと強引に部屋から連れ出す。


「団長!話を…」


話を聞いて、とエディが言うよりも先に部屋のドアは大きな音を立てて閉じられた。

彼の最後の願いもシアンには届かなかった。


エディが連れ出された後の給湯室はしんと静まり返っていた。

息をするのも憚られるほどだが、シアンは大して気にしていないらしい。

アメリアは両の拳を握って、絞り出すように言った。


「あの、助けてくださってありがとうございました」


言葉にするだけでも勇気が必要だというのに、シアンは「誤解しないでください」と眉間に皺を寄せて溜め息を吐いた。


「紅茶を淹れるにはあまりに時間がかかりすぎていました。また失敗して茶葉を無駄にしたのではないかと煩わしく思っただけです」

< 43 / 148 >

この作品をシェア

pagetop