騎士団長のお気に召すまま
「ほ、本当に敵国の諜報員だったなら大問題です!そうなるよりは、いち早く対処すべきだと…」


しかし最後まで言い切る前に、シアンが遮るように大きな声で言った。


「騎士団は、この国と王族を命懸けで守る者。そして守るべき国というのは、国土と国民。騎士団員としてあなたにもそう教え込んだはずですが」


エディは頷いた。騎士団で働くようになってから、それを忘れたことなど一度もなかった。

けれど分からなかった。なぜそんなことを今さら言うのか。

エディが頷いたのを見たシオンは「ならば、なぜ分からない」と語意を強めた。


「彼女は騎士団員を支えてくれる国民です。騎士団が守るべき存在。守るものに剣を向けるなど言語道断です」


剣を握る力を強くするシオンに「お待ちください」とエディは乞う。


「だ、団長は信じておられるのですか?この者が本当に守るべき国民だと。裏切り者ではないと」


その言葉にシオンは一瞬驚いたのか動きを止めたが、すぐに「ええ」と頷いた。


「彼女を騎士団に迎え入れる際、彼女の身辺については徹底的に調べ上げましたよ。騎士団はこの国の要。少しでも疑わしい人物は騎士団員にするはずがないでしょう。

それとも、僕はそこまで考えが至らない浅はかな人間だとでも思っていたのですか?」


ぎろりと睨みつけられたエディは青ざめて首を横に降った。


「い、いえ、決してそんなことは…!」


それを聞いたシアンは「そうですか」と返事をしたが、厳しい表情は変わらない。


「エディ、あなたも知っていますよね。

どういう状況でも、剣を向けるときに思念があってはなりません。騎士として最低限守らねばならぬことです。

それを守れない者はここにいる資格がない」


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