騎士団長のお気に召すまま
「お嬢さんもいいかな?」

グレンにそう声をかけられたが、一団員であるアメリアが赤の騎士団の団長に何か意見を言えるわけがなかった。

「ええ」と返事をすると「ありがとう」とグレンは目を細めてにっこり微笑む。

そしてそのままシアンをほとんど強引に連れて行ってしまった。


まるで嵐が過ぎ去ったようだった。

そのまま壁際でぼうっと男女がダンスを踊る姿を見ていると、「どうしてあなたのような方が壁の花なのです?」とヘンディーが声をかけた。

振り返るとヘンディーは口元をへの字に曲げて「シアンは何をしているんだ」と溜め息を吐いている。


「シアン様はグレン様とどこかへ行かれてしまいました」


アメリアの言葉にヘンディーは「ふうん、そうでしたか」と頷いたが、眉間に皺を寄せていた。


「あいつは本当にダメな男ですね。貴女を置いてどこかへ行ってしまうなんて」


その言葉にアメリアは何も言えなかった。

ほとんど強引に連れ去られてしまったシアンの方が可哀そうだとも思ってしまう。


そんなアメリアにヘンディーは跪いて手を刺し伸ばす。


「僕と踊りませんか?」


温かい微笑みにアメリアは目を見開いた。


「あいつは貴女をほっぽりだしてどこかへ行ってしまったんです。あなたもこのパーティーを楽しまないと損ですよ」


損、なんて言葉は簡単にアメリアの心を動かす。貧乏貴族の恥ずかしい癖だとアメリアは心の中で自分自身に呆れた。

ここに来たのは、何か仕事や任務があってのことではない。それならば少しくらい楽しんだって罰は当たらないだろう。

差し出されたヘンディーの手をとるとアメリアは微笑んだ。

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