臆病でごめんね
「皆様もうお揃いとのことでしたので、そろそろ…」

「ああ、うん。そうだね」

副社長は本丸さんに向かって頷きながら返答すると、再び私に視線を合わせて言葉を繋いだ。

「それでは失礼します」

「はい」

そのまま彼は歩き出す。

本丸さんは私にサッと会釈してから後に続いた。

……その表情が若干不機嫌そうに見えたのは私の気のせいだろうか。

おそらく参加者の中では大分若手の副社長が、仕事の都合でやむを得ないことではあったのだろうけど会が始まるギリギリに会場入りすることになってしまって、秘書としては気が気ではなかったんだろうけど、何だか必要以上に彼を急かしているように感じられた。

まるで私との会話を一刻も早く終わらせたいかのように…。

あんな仕事一筋って感じのキャリアウーマンでも、やっぱりお金持ちのイケメンにはよろめいちゃって、その人が関わる女性に嫉妬したりするんだな。

私は呆れながらため息を漏らした。

だけど反対に言えば…。

副社長は大切な会合の前なのに社員のいざこざの仲裁に入り、そして私に労いの言葉をかけて下さったのね。

ホントに優しい人だな…。
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