臆病でごめんね
「仕事の方はどうなの?茅乃」

夕げの席で、いただきますを唱えた後、お味噌汁のお椀を手に取った私に向けてお母さんが問いかけてきた。

私は実家暮らしで遅番の日でも19時過ぎには帰宅できているので、夕飯はほぼお母さんと一緒に食べている。

激務でいつも帰りが遅いお父さんと、受験生で塾通いしている妹はその日によっていたりいなかったりするけれど。

実家は都内でなおかつ交通の便がすこぶる良い場所にあるので、これからもここを離れるつもりはない。

というか、私みたいなタイプが独り暮らしなんかしたら色々な面で危ないだろうから…。


「うん…。私の教育係が口うるさい人だから、ちょっとしんどく感じる時があるんだよね」


なんて、考え事をした後にちょっと間を開けてしまってから返答した。


「あと、社員の中にも意地悪な人がチラホラいたりして…」

「あら。大丈夫なの?」

「でも、どこに行ってもその手の人はいるだろうし。何とかめげずに頑張るよ」

「そうね。そんな下品な人達には負けないで」

「何なの。そのいかにも相手が悪いような言い方」

すると遅ればせながらダイニングに姿を現した妹の夢乃が、会話を聞きつけたらしく、苦笑いしながら口を挟んできた。


「どうせお姉ちゃんがいつものごとく、トンチンカンなことを色々とやらかしまくってるんでしょ。お小言や嫌味を言われるのは当然だっての」
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