臆病でごめんね
「しっかりしてよ外田さん。冗談じゃなく、あなたのせいで私達までここを追い出されちゃうかもしれないのよ?」

「で、でもあの…」


阿川さん同様、冷たい視線を向けてくる先輩方に萎縮しつつも私は頑張って反論した。


「私だけの責任ではないと思うのですが…」

「はぁ!?」

「漂白の桶が決められた場所に置いてなかったり、生ゴミ用の袋が在庫切れしてたり…。それって社員がルールを破ってるって事だし、前の日の担当者が備品の補充を忘れたって事ですよね?」

「定位置になかったら探せば良いだけの話でしょう?給湯室はそんな大した広さじゃないんだからすぐに見つかるでしょうよ。そして袋が無いならストック場所に取りに行きなさいな。そこへの出入りは許可されてるんだから。誰かの補充忘れくらい黙ってフォローしなさい。普段の自分はそんなのとは比べ物にならないくらい周りに迷惑をかけまくっているんだから」

「でもあの、普段と違う事をされると段取りが狂って、ひとまず他のを先にやろうと動き回っているうちにその処理を忘れてしまうんです。変な邪魔が入らなければ私もちゃんとやれるのに…」

一瞬の間の後、深く長くため息を吐き、先輩は話を再開した。

「……前々から思ってたけどホントあなた、言い訳だけはいっちょまえなのよね」

とても冷たく陰鬱な声だった。
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