臆病でごめんね
後輩を嗜めている時も、私の為というよりも、「22才に見えない」というキーワードが気に入らなくて癪に障ってついつい口を出しているように思える。

おそらく本丸さんは今までの人生、年齢より若く見られたという経験はないだろうし、女性にしては大柄だから、きっと私みたいに小さくて幼い雰囲気の子に嫉妬心があるのかな、なんて…。

でも、多少老けてたって本丸さんはそれを補って余りある美人さんなんだからそんなの別に良いじゃないか、と思う。

私もやっぱりきちんと年相応に見られるようになりたい。
いつまでも子供扱いされるのは恥ずかしいし、何より、それによって理不尽なジェラシーを向けられるのはもういい加減疲れた。

その心情を内に秘めておけず、思わず盛大なため息をつきつつ私も化粧室を出た。


「ちょっと外田さん。トイレにどれだけ時間をかけてるのよ」

自分の部署に戻るやいなや先輩社員から叱責された。

「社員さんの為に、私達はやるべき事を終えたらさっさと退室しなくちゃダメだって散々言ってるでしょ」

「す、すみません」

私は萎縮しながら謝罪する。

先輩と私はこの社の正社員ではなく、別の会社に登録していてこちらに派遣されている立場だった。
他にも同じ業務を任されている仲間は何人もいて、ローテーションで勤務している。

だからあらゆる面で、ことある毎に「派遣としての身をわきまえて」と指導されているのだけれど、でも、朝のトイレに時間がかかっても仕方ないじゃないか、と思ってしまう。
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