臆病でごめんね
私なんて、売店で一番安いお弁当か、お母さんのショボい手作り弁当しか食べられないのに。

随分優雅なご身分だこと…。


「ついでに医務室で履き替えさせてもらうわ。ただ、もしかしたら昼休みを少しオーバーしてしまうかもしれないから、他の方に状況を説明しておいてもらえる?」

「はい」

「分かりました」


二人の返答を受け、本丸さんは医務室に向かって歩き出した。

歩調はしっかりしているし、本人の言葉通り、大したことはないのだろうと判断し、私も当初の目的を果たすべく、ワゴンを押して足を踏み出す。


「……なんなのあの人」


すると背後から、あえて聞こえるように発しているのであろう陰口が聞こえた。


「自分がケガさせちゃったんだから、普通は速攻謝るし、医務室への付き添いも申し出るわよね」

「ホントですよねー」


もう一人もすかさず乗っかる。


「結局謝罪してないどころか、終始無言でボケーっと突っ立ってるだけだし。社会人としてマジありえない」


相変わらず私を扱き下ろす時はイキイキしているのね。

でも、そんな意地悪に構ってる暇はないの。

私は仕事中なんだから。

やるべき事をやらなくちゃ、また先輩に怒られちゃう。

そう考えながら、持ち場である、自動販売機とソファーセットが置いてあるエリアに到着した私はチラリと振り向き、エレベーターホールの方を伺った。
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