【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
ほんとに冷たい人だったら、私を呼び止めたりなんかしないはず。
口は冷たくても...中身は暖かいんだね。
「なに笑ってんだ」
「へへっ、なんでもないです」
「...変な奴だな、お前」
私に歩幅を合わせてくれている彼が、無言の気まずささえも"圧"で消す。
この人の隣は、雪解けの道で春風が肌を滑るみたいに...居心地がいい。
充電切れのスマホが、今この瞬間を止めているみたいで...この時がもっと続けばいいなんて。
思ってしまう私は、イケナイ子ですか?
「...入れ、どうせもうすぐ朝だ。
朝までなら居させてやるよ」
連れてこられた場所は、錆びた建物が取り囲む、不釣り合いな高級マンション。
エレベーターに乗ってやってきた、最上階の部屋。
ドラマとかでしか見たことがない、キラキラした雰囲気に思わず絶句。
「...」
「...はやく入れ」
「でも、あの。...だって、こんな所初めてで...」
「いいから入れ。
お前のその鈍さに、俺はさっきからイライラしてんだ」
「うわっ...!」
軽く膝の裏を蹴られて、乱暴に部屋の中に入れられた。
優しいけど...乱暴
乱暴だけど...優しい。
どっちが本物の彼なのか、よく分かんないや。