【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。




「...らん」



急に俺の方を向いて、切なそうな顔を向けてくる父さん。


ピリッと変わりだす空気に、息を呑んだ。


どうしたんだよ父さん。


そんな目で俺を見つめんなよ。



「蘭、...母さん」


「なに、」


「母さんは...」


「だから...なんなんだよ!!」


その先を言わない焦れったい父に、息を荒らげて怒鳴ってしまった。


父さんは目を瞑ったまま、ゆっくりと口を開く。



「母さんは、もう戻ってこない」


「...はあ?」


「だから、出ていったんだよ」


「...」


はは...なに言ってんだよ父さん。

もしかして俺を脅かそうとしてるの?



なにバカみてえなこと言ってんだよ?


この世で1番聞きたくない嘘を
実の父親に言われてる俺の身にもなれよ。





「父さん、いくら母さんのことが嫌いだからって、そんな嘘はよくねーよ」


「嘘じゃない」


「エイプリルフールはまだ先なんだけど」


「蘭」


「...ん、だよ」


「...本当だ」


「...」


「あいつは、俺名義で借金をして、おまけに離婚届けをテーブルに置いて逃げていった」


「...」



「母さんは、俺とお前を裏切って出ていったんだ」


「ーーーーーッ!?」








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