【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
「母さん...久しぶり」
薄く開いた唇から、やっと絞り出せた声で蘭君が母親の肩を掴みながら言った。
蘭君は大人だった。
怒鳴るわけでもなく、冷たくあしらうわけでもなく。
ただ、昔はちゃんとした愛があったことを思い出しながら
その綺麗な顔で不自然に笑うんだ。
感情的にならない蘭君のことが怖い。
一発叩いたって
近所に迷惑かけるくらい怒鳴ったって
絶対バチなんか当たらないのに。
蘭君はしないんだ...。
それじゃあ私は...なんでこんな所に居るんだろう。
ただ...見たかっただけなんだ。
蘭君の復讐を。
だって蘭君だけが傷つくなんて...そんなの不公平じゃないか。
もういや...
もう嫌だ、全部嫌い。