ワンダーランドと雪白姫(童話集)


 継母は、雪白姫と一緒に、毎日おいしい料理を作りました。

 継母は料理をおそわるかわりに、雪白姫に肌のお手入れの仕方をおしえ、昔自分が着ていたドレスをプレゼントしました。

 雪白姫はとても喜び、さっそくお城の庭でひらかれたお茶会でそのドレスを着ました。

 客人たちは口々に、雪白姫のあざやかな黄色のドレスをほめました。

 雪白姫はそのドレスは継母からもらったものだと話すと、客人たちは口々に継母のこともほめました。継母はとてもほこらしくなり、ごきげんに手料理をふるまうのでした。



 それから間もなくして、継母はだれの手助けもなく料理を作れるようになりました。その料理を食べた雪白姫はとてもしあわせそうな顔でこう言いました。

「明日からわたくしは、お義母さまに料理をおしえていただかなければなりませんね」

 そうなのです。毎日毎日料理を作っていた継母は、みるみるうちに上達し、雪白姫よりおいしい料理を作れるようになっていたのです。

「ええ、ええ、おしえますとも。雪白姫の好物もおいしく作れるようになりましたので、今度作ってさしあげます」

「とてもうれしいです。お母さまにはこんなに良くしてもらって、わたくしはとてもしあわせものですね」

「いいえ、雪白姫。あなたが料理をおしえてくれなければ、わたくしは一生台所に立ちませんでした。そうなれば料理のおいしさを知らないまま過ごしていたでしょう。雪白姫、どうもありがとう」

「いいえ、お母さま。お礼を言わなければならないのはわたくしです。お母さまがわたくしにお肌のお手入れの方法をおしえてくださらなければ、わたくしはじゅうぶんなお手入れもしないまますごしていたでしょう。そうなればお母さまのようにうつくしくいられなかったでしょう。本当に、本当にありがとうございます」

 雪白姫とお礼を言い合った継母は、ここでようやく思い出しました。

 料理をおぼえたのは、雪白姫に毒を飲ませるためだったのです。


 ですが継母はもう、料理に毒を入れる気にはなりませんでした。

 毒に味があるのかは分かりませんが、おいしくできた料理に何かをくわえることは、どうしてもできそうになかったのです。



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