Perverse second
喧嘩したって言ってんのに、何に安堵してんだよ。



突っ込んでやりたかったけれど、深く掘り下げられると,それはそれで困る事になる。



俺は敢えて口を噤んだ。



津田さんはまるで宥めるかのように緩く微笑む。



「お前達が仕事熱心なのはよく知ってるよ。意見がぶつかる事もあると思う。だけど後を引かないようにな」



「はい。すみませんでした」



再度頭を背げながらも、普段通りとは一体何なんだと考える。



後を引かないように、と口で言うのは簡単なんだ。



それができないから苦労しているのだから。



『行こうか』と言われ、二人でエレベーターへと向かう。



ほんの3日前までは普通でいられたのに、その距離を勝手に踏み越えてしまったのは俺自身。



三崎は元に戻そうとしてリセットを提案しただけなんだ。



俺が一人で勝手に傷付いて落ち込んで、普段通りの距離感を忘れてしまっただけだ。



それがわかっているのに、どうして三崎の気持ちを組んであげられないのだろうか。



男としての情けなさを感じながら、隣にいる理想の上司で女の理想の塊である津田さんに劣等感を抱かずにはいられなかった。
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