Perverse second
いざリセットすると言っても難しいものだ。
あんなことをしてしまった後に、何事もなくいつも通りで過ごすなんて器用な真似ができるはずもない。
結果として仕事以外では、ぎこちなく三崎を避けるはめになる。
「柴垣、ちょっといいか?」
外回りに出ようとフロアを出たところで、津田さんから声を掛けられた。
俺は足を止めてゆっくりと振り向くと、
「いいですよ」
と、軽くかえした。
本当のところは津田さんと話したくなんてなかった。
どうせ彼が知りたいのは、俺と三崎が急にぎこちなくなった理由だろう。
休憩フロアに着くと、互いに自動販売機でコーヒーを買い喉を潤した。
「ごめんな、出掛けに」
「いえ、どうしたんですか?」
わかっているのにわざとらしく聞き返す。
「いや、出張から帰ってきてからの柴垣と三崎さんが気になってさ。必要以上の会話はないし、お互い目も合わさない。何かあったのか?」
「特に何もないです」
言葉に言い表せないほどの何かがあったから、今こうなってんだよ。
そんなこと言えるはずもないけれど。
とはいえ何もないと言われて納得できるほど、俺と三崎の雰囲気がよくないことはわかっている。
「……実は仕事の行き違いで大喧嘩になりまして……。すみません、公私混同が過ぎました」
頭を下げると津田さんは『それならよかった』と呟いた。