Perverse second
「今日は早く帰れそうだな」



時計を確認すると、もうすぐで19時になろうとしていた。



フロアには数人残っていたけれど、三崎のデスクは奇麗に整頓されていて、どうやら今日はもう帰ってしまったようだ。



タイミングが合えば今日こそは一緒に帰って、ちゃんと話をしようと思っていたのだが仕方がない。



次に三崎と話すときは、自分の気持を優先するのではなく、三崎が本当に望む関係性に戻って、心の緩和を与えてあげなくては。



ようやく気持ちの整理がついて、俺も少しは楽になったような気がした。



事務処理を手短に終わらせて席を立とうとしたとき、



「お疲れ様」



と、帰社した津田さんが俺に声をかけた。



「お疲れ様です。津田さん、今日は朝から嫌な役回りさせてしまってすみませんでした」



俺がそういうと、津田さんはちょっと驚いた表情をしたが、



「いや、俺こそごめんね。余計な口出しして」



と苦笑いした。



立場上、課の雰囲気作りも彼の仕事だ。



時には言いたくないことも言わなくてはならないのだろうと、自分の気持が落ち着いて初めて気が付いた。



「いえ、津田さんに言われて反省しました。ちゃんと明日、三崎に謝ります」



「そうしてくれると助かるよ。今から帰るんだろ?お疲れ様」



「……お疲れさまでした」



何処までいってもジェントルな津田さんにそう返すと、俺はフロアを後にした。
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