Perverse second
会社を出る前に竹下に捕まったけれど、何とか脱出し急いで駅に向かい電車に飛び乗った。



最近の竹下は本当にお構いなしに絡んでくるものだから頭が痛い。



けれど同時に、自分の感情に忠実すぎる部分が羨ましくもあった。



電車を降りてしばらく歩くと、目の前に三崎の背中を見付けてしまった。



どうするか決めあぐねていると、一緒にいた二人が俺に気が付いてしまったようだ。



「楠原と…水田も?」



こんなところで会うなんて初めてで、俺は少し驚いた。



「偶然ね。今帰りなの?」



楠原はそう言いながら俺に近づいてきた。



「ああ。今日は早くケリついたからな」



「そうなんだ?私達は結菜の家で宅飲みよ」



「へぇ……」



「柴垣くんも来る?」



恐ろしく感じるほどの楠原の誘いに、俺はかなり動揺したが「遠慮しとく」と何とか苦笑いでそう答えた。



「結菜さんっ!すみません、私、重たいほう持たせちゃって。変わりましょうか?」




「え?」



水田の声で三崎の手元を見ると、アルコールの類がたくさん入ったビニール袋を提げている。



たいした力もねぇくせに……と溜め息を漏らすと、俺は水田の横から三崎の持っていた袋を手にした。



俺の行動に驚いたのか、三崎は驚いたように俺を見上げた。



「貸せ。重いんだろ?」



優しさの欠片もない言い方だったからなのか、三崎の瞳が潤んだように見えて、俺は驚きのあまり目を見開いてしまった。



三崎は顔を隠すように俯くと、「ありがとう……」そうぽそりと一言呟いた。



「ついでだからな」



俺はそう言って三崎と一緒に歩き始めた。
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