Perverse second
津田さんは、ぽかんと口を開けたまま固まった。



俺の言葉をどう捉えたのかは分からないが、突然プッと吹き出して笑いだした。



「わかったよ柴垣。遅くなったから、三崎さんをちゃんと送ってあげて」



「ご存知のとおり、隣同士なんで心配無用ですよ」



大体そんな事を津田さんから言われる筋合いなんてないのだ。



そもそも俺がいるっていうのに、三崎を送ろうとするのも気に入らない。



三崎を送るのは俺だけの特権なのだ。



それはこんなギクシャクした関係になっても、変わらないのだから放っておいてほしい。



「さすが柴垣だ。柴垣の見極めがなかったら、たった5人で交渉は終わらなかったよ。だから今日の所は引いとく」



「何言ってんすか」



引いとく、ってなんだよ。



沸々と湧き上がる不満を収めるように、俺はデスクの片付けを始めた。



「ほら三崎さんも帰る準備して。俺ももう少ししたら帰るから」



「はい。ありがとうございます。津田さん、今日の事は…」



「誰にも言わないから大丈夫だよ」



「すみません」



事を大げさにしたくないのだろう。



三崎はそう言って帰る準備を終えた。



「じゃ、お疲れ様でした」



「本当にありがとうございました。お疲れ様でした」



何か言いたげに手を振る津田さんを残して、俺達はフロアを出て行った。
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