Perverse second
人も疎らだった社内を出て駅へと向かった。



最近ようやく普通に接することが出来るようになってきたと思ったのに。



今は何となく会話を避けてしまう。



毎日一生懸命に仕事に向き合って、成績を伸ばすだけでなく、顧客のことを第一に考えてやってきたことを知っているから。



だからなおさらに今回のことが本当に竹下の仕業であるならば、原因は間違いなく俺にあると分かっているからだ。


「あのさ…」



三崎にどう説明したらいいのかも分からないまま、俺はポツリと呟いた。



「入荷予定表、直接企画から貰ったんだろ?それってやっぱり…」



「柴垣くんっ」



俺が言いたいことを、きっと三崎は悟っているはずだ。



だけど三崎は敢えてその先を遮った。



「今回のことで柴垣くんや津田さんには迷惑かけちゃったけど、私にとってはいい経験をさせてもらったと思ってる」



「何言って…」



「本当だよ。思ってるっていうか、思わなきゃいけないのかな」



下手したら今まで積み上げてきた信頼が崩れる可能性だって大きかったはずなのに、そんなこと、本気で思えるはずがないだろう。



なのに三崎は無理矢理笑顔を作ろうとしながら先を続けた。



「私ね、企画や物流から与えられる情報を確認することなく鵜呑みにしてた」



営業と物流、企画は密に連絡を取り合っていて、下りてくる情報を疑う事など通常ならば有り得ない。



「人の仕事にミスは付き物なんだって改めて思ったの。だからこそ自分でちゃんと確認することが大切なんだよね」



ニッコリ微笑んで『ミス』だと、そう言う三崎に、俺は何と言葉を返していいものかと呆気にとられてしまった。
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