Perverse second
「そっか」



この神妙な空気に不似合いなほど明るく言った俺は、ワザとらしくにっこり笑った。



「三崎は凄いな。さすが人間できてるよ」



「そんなんじゃ…」



「いやいや、こんな事があっても『お勉強になりました』って精神で怒りも責めもしねぇんだもんなぁ。びっくりだ」



オーバーな程に三崎を褒め称えて、小馬鹿にしたような態度をわざととる。



俺の前で竹下を怒れないなら、いっそのこと俺を怒ればいいんだ。



怒りは燻らせるよりも爆発させた方がいい事だってある。



きっかけは何でもいい。



とにかく何かに怒って、ふざけんなって怒鳴れ。



「さすがみんなの理想の三崎さん。そりゃ好かれるわけだ。俺には真似できねぇわぁ」



「ちょっとっ」



ここまで言うと、さすがに腹が立ったのか、三崎が興奮気味に俺を制止した。



今の三崎はこれが限界だろうと感じ、俺はニヤリと意地悪な笑みを見せた。



「やっと怒った」



そっと三崎の頭をポンポンと優しく叩くと、



「ほんっとお前はバカだな」



そう言って今度はくしゃくしゃと撫で回した。



「柴垣くん、ちょ…髪が…」



頭頂部がくしゃくしゃになった髪を、三崎はおたおたしながら手ぐしで整えだす。



人のせいにせず、自分の落ち度を反省し、次に生かそうとする。



それは三崎の良いところだが、同時に悪いところでもある。



「お前はどうしていつも自己犠牲で自己完結するわけ?」



手を止めて俺を見上げた三崎を、俺は真剣に見つめた。
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