Perverse second
立ち止まったそこは、もうマンションの前だった。



どうしてもこのまま三崎と別れるわけにはいかない。



そう思った俺は、三崎のマンションと俺のマンション間にある横路地に三崎を引き入れてしまった。



「お前はどうしてもっと自分を認めてやらねぇんだ?」



周りの連中は皆、三崎の人柄や仕事っぷりを評価しているというのに、当の本人が頑なに自分を正当に評価していない。



少し強い口調でそう言うと、まるで叱られた子供のように三崎の眉が頼りなく下がった。



「お前が人一倍努力している事。自分の売上より顧客を一番大切にして営業してることくらい俺でも知ってる」



「……」



「だからこそ、今お前がどう思ってるかくらい手に取るようにわかる」



入社してからずっと三崎を見てきたんだ。



大阪にいた時だって、三崎の功績は数字で見て取れたし、陸からの報告も受けていた。



なのに他人に踏みにじられるなんて、耐えがたい屈辱だろう。



そんな気持ちを、俺にくらいは素直に吐き出してほしいんだ。



「お前の本心は?ちゃんと俺には言えよ。その上で今お前は悪くないって言ってやれるのは、俺以外にいねえだろ?」



本当のお前を知っているのは俺だけだろう?



「俺の前で格好つけんな。ちゃんと自分の気持ちを認めてやれ」



そう言うと、三崎は泣きそうな表情をして俺を見つめた。



「いいのかなぁ……」



ぽそっと呟いた三崎に。



「いいんだよ」



俺はその先を促すように微笑んだ。
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