Perverse second
徐々に笑顔になっていく三崎を見つめていると、津田さんがどれだけ優しくフォローしているのかが見て取れる。



きっと俺が逆立ちしても言えないような言葉で包み込んでいるのだろう。



会話が終了しスマホをバッグにしまった三崎が俺の様子を伺うように見上げてくる。



その表情が明らかに津田さんとの会話中の時と違い過ぎて、苦笑いするしかない。



「津田さんすごいな」



思わず漏れてしまった言葉に、三崎はきょとんと首を傾げた。



「冷静な判断と行動。それにフォローも忘れない。あの人が付いていれば大丈夫だって安心感があってさ」



俺との違いがデカすぎて笑いが込み上げる。



情けなくなってきて、とても三崎の顔がまともに見られない。



「人として男として今のままだと勝てないんだって痛感したよ。認めたくないけど」



「そんな事ない。今日だって柴垣くんがいてくれて心強かったのに」



そんなことあるはずがないんだ。



俺は全然冷静な判断もできなくて、結果として間違いのない判断をしたのは津田さんだ。



「俺は全て津田さんの判断に従っただけだ。もっと的確な自己判断ができねえと駄目だ。色んなことに惑わされないように」



俺は営業マンとしても男としても、何一つ津田さんに勝るものがない。



自分でそれを認めるところから始めなければ、今後の成長もないだろう。



自分の無力さと三崎の視線から逃げ出さないために、俺は強い視線を三崎に向けた。
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