Perverse second
「え、別れちゃったの?」



楠原の声が俺の耳に飛び込んできた。



「しーっ、声大きい」



「ごめん。だけど結菜が振られるって事に驚いちゃって」



「これで2人目。同じ理由で振られちゃった」



残業中の休憩室。



自動販売機と観葉植物で遮られた一番隅でコーヒーを飲んでいた俺は、思わず身を屈める。



三崎に彼氏がいると知ったのはいつだっただろうか。



まだ何も伝えても始まってもないのに、いきなり一方的に失恋を決定づけられた。



大学卒業後に告白されて付き合っている彼氏がいると、飲み会の時に楠原から聞いた時は世界の色が無くなったようだった。



けれどそれでも諦めることが出来るはずもなく。



俺は悶々と初めての片想いとやらを絶賛体験中だった。



そして今耳にしたこの事実。



俺は安易に、これはもう神様が哀れな俺を救ってくれたのだと思った。



これが試練の始まりだったなんて、俺にわかるはずもなかったから。



「私と付き合っていると気が抜けないって。私が尽くせば尽くすほど辛くなるって。逃げたくなるんだって。自分がダメになりそうで怖いって…」



「なにそれ。随分と勝手な言い草ね」



「追い詰めたつもりはないんだけどな。高校の時に初めて付き合った先輩にも同じような事言われて浮気された」



「ええっ!?」



三崎と付き合ってんのに浮気するとか、どんだけの男だよ。
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