Perverse second
「そっか…津田さん…か。…だったら俺は出る幕ねぇな」



頼りになる津田さんのフォローがあれば、俺なんて必要じゃない。



俺が三崎の立場でも津田さんを頼るだろう。



そう思うと情けなくて笑いが込み上げてきた。



「…ごめんなさい…嫌な言い方しちゃって」



三崎は慌てたようにこちらを向いて謝罪したが、こんな情けない顔を見られたくない。



俺は自分のデスクに置いてあるパソコンに向き直り、三崎の視線から逃れた。



「いや。三崎の言う通りだから」



格好つけてわかったような台詞を吐いてみたところで。



本心からそんな事を思えるはずもない。



内心では思うところがありすぎて言葉にできないくらいだ。




俺と津田さんの違いなんて、今の俺に冷静に判断することは難しい。



けれど一つだけ分かるのは、津田さんなら俺のような回りくどい事はしないだろうということだ。



竹下の件にしても、事を大きくするなり会社に報告するなり、もっといろいろな選択肢があるはずで、津田さんはきっと円滑に終わらせる方法を選ぶだろう。



俺がやっている事は根本的に何の解決にもなりはしない。



ただのその場しのぎだ。



それでも俺は、誰にも頼らないで自分で何とかすると言った三崎の強さを信じたかった。



綺麗事かもしれないし、場合によっては状況を悪化させるかもしれないけれど。



きっと三崎はただの優しい三崎さんではなく、強さを持った三崎に変われると思うから。



もう少しだけ食い止めるから、立ち上がってほしいと願ってたんだ。



けれど三崎にはもう、必要のないことかもしれない。
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