Perverse second
その後、三崎は何も言ってはこず、週も明け少しずつ俺達の関係も修復してきた。



三崎には笑顔が戻ったし、ちゃんと俺を見て話すようにもなった。



ほんの小さなことだけれど、俺にとっては大きなことだった。



朝から席を外していたそんな三崎が、えらく気合の入った顔をしてデスクに戻ってきた。



「何か大口商談でもまとめんの?」



俺はまじまじと頬杖をついたまま三崎に声を掛けた。



「ううん何も。今日は私、商談入ってないから」



「その割になんか、気合入ってるみたいだけど」



どんな顧客に対しても気負わず、いつもの姿勢を崩さないタイプの三崎だからこそ、こんな表情は初めて見るものだった。



「津田さんと同じ事言ってる」



くすっと可愛らしく笑った三崎の言葉が、ちくりと胸に刺さる。



「そ」



素っ気なく短い返答をして自分のパソコンに向かい、いつもより大きな音でエンターキーを叩いた。



「……津田さんと一緒って……なんだよ」



心の声が思わず口から出てきてしまったことが恥ずかしくて。




「ねぇ」



「……」



俺は三崎の呼びかけに敢えて答えなかった。



日に日に感じる津田さんと俺の男としての差は広がる一方で。



三崎が津田さんの名前を出すたびに、俺はかき乱されるんだ。



「ねぇってば」



引き下がらない三崎を横目に。



「…んだよ」



感情を隠すかのように不愛想にそう答える。



思ってることが口に出るとか……もうイカれてるとしか言いようがない。
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