Perverse second
無意識に男を惑わす女というのは本当に存在するもので。



まさに三崎は典型的な女だった。



言葉一つ、仕草一つ、笑顔一つ、視線一つで男どもが一喜一憂する。



だらしなく顔を緩めるヤツらを見ながら、俺もコイツらの仲間なのかと思うと自分を殴りたくなった。



同じになりたくない。



その他大勢の中に埋もれたくない。



気持ちは焦るものの、実際のところどうしていいのかわからずに。



行き着いたポジションは、妙に構ってくるのに冷たいヤツ。



俺の恋愛に対する知識は『男は好きな子にはイジワルをする』だったから。



「なんだよお前。小学生男子か?」



「うるせぇよ」



「いやいや義人やべぇって。今どきの小学生だって好きな子にはもっとジェントルだぞ?」



仕事帰りの居酒屋で、浴びるようにビールを飲みながら、陸はずいっと身を乗り出した。



「園児だ園児。お前の恋愛スキルは園児並み」



「お前、完全に面白がってるだろ」



「当たり前じゃん。これだけのモテ男が園児と同レベルなんてさ」



「仕方ねぇだろ。どうしていいかわからねぇんだから」



わかってたらもっと違うポジションにいるはずだ。



「でも義人、気を付けろよ。大人の意地悪は、ヘタすりゃ命取りだからな」



この陸の言葉を素直に聞いて、早急なレベルアップをすれば良かったと後悔するのは、わずか3日後の事だった。
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