Perverse second

それからの年月は本当に我武者羅に働いた。



ここで成長し自信をつけないと、何のために大阪に来たのかわからない。



自分の得意先の開拓から始めて、うまく数字になってきたら引き継ぐ。



これが主な仕事になっていた。



自分の手で開拓しても自分で育て上げられないのは当然で仕方の無いこと。



俺はその為に来たのだから。



わかってはいるけれど、時にはやるせない気持ちになったりもする。



そんなときは大抵、見計らったかのように陸から電話があった。



考えるのもおぞましいけれど、俺の運命の相手はひょっとすると陸なんじゃないかと思うほどタイミングがいい。



不思議だが陸との電話は、荒んでいる心が自然と落ち着くのだから有難い。



きっと陸とは一生親友である気がする。



それでも結果は思っよりもずっと早くに出て、営業成績はかなりのものだった。



そのせいなのか、おかげなのか、当初は2年であった転勤は、支店長の本社への猛烈な掛け合いがあり、3年に延長されたのだ。



スーパーエースだの救世主だのともてはやし俺に媚びてくる奴らもいて、その時初めて他人の過剰な思い込みや期待、勝手な理想の押しつけなどの鬱陶しさが身 にしみた。



俺は人に理想と現実を混同させるなと突き放せるが、きっと三崎はそれを背負ってしまうのだろう。



結局俺は社会人としての成長はできたけれど、男としては一向に変われず、相変わらず三崎でいっぱいだった。

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