Perverse second
真っ直ぐ三崎を捉えると、それに耐えられないのか。



彼女は先程の笑顔とは裏腹に表情を曇らせて目を逸らす。



「な…何やってるの?こんな所で」



「給湯室の確認。何がいるのか何があるのか。それがわからないと茶も入れらんねぇから」



三年前までここにいたのだから苦しい言い訳か。



そう思ったけれど、



「そか…」



興味もないのか、大した疑問も持たずに三崎はぽそっと呟いた。



「それともこの課は優しい『三崎さん』が笑顔でいつでも入れてくれるわけ?」



俺の意地悪な質問に、ぐっと言葉に詰まった三崎を見ると溜め息が出る。



「ここでは三崎がお茶当番なのかって聞いたら、アイツら『三崎さんの入れてくれたお茶は特別美味しいから』って笑ってたぞ」



「…そう」



本当はそんな話してねぇけど、どうせ似たような事を言われて自然と請け負ったってとこだろ。



そんな苦虫を噛み潰したような顔したって、嫌だと言わなきゃ誰も何もしてくれねぇんだよ。



俺の言い方が悪いせいか、三崎の隣の女子社員が影で眉間に皺を寄せたのが見えた。



「お前、いい加減その仮面みたいな笑顔やめろよな」



「えっ?どういう意味?」



お前も三崎の後輩なら、コイツの中身を見てやってくれよ。



そんな思いも込めて、困惑している二人を放置し給湯室を後にした。
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