Perverse second
改札を出て夢の時間が終わる覚悟をしていたのに。



いつまで経ってもこの時間は終わらなかった。



「柴垣くん、もしかして送ってくれてるの?」



戸惑いがちに聞いてきた三崎からは、迷惑そうな感情は見受けられないけれど。



「んなわけねぇだろ。残業なんて日常茶飯事なんだから、この時間で送ってたらこれから毎日送らないといけねぇじゃん」



「だよねぇ…」



小さく溜め息をついた三崎を横目に見ながら。



本当に俺はバカなんじゃねぇのかと自分で自分を攻め立てた。



三崎の溜め息の理由が安堵からなのな何なのかはわからないけれど。



これは素直に『危ないから送ってやるよ』と言うべきところだろ。



他人のことならわかるのに、どうして自分の事となると後悔する事ばかりしてしまうんだろう。



「柴垣くんちって本当にこっちなの?」



何をそんなに警戒した言い方をしてんのか。



やっぱり俺が付いてきてると思ってんのかも知れない。



そう考えると思わず意地悪な言い方をしてしまうのが馬鹿な俺で。



「お前こそ俺に持ち帰られるつもりかよ」



「そんなわけないでしょ!」



力強く否定される事は想定の範囲内。



だけどその過剰な反応は、俺の中に1ミリ程度の期待を持たせてくれて。



だらしなく目尻が下がりそうになるのを意地で堪えて、何とか強気の笑みを浮かべた。



「そこの角を右に曲がればウチ」



指をさしてそう告げると。



「…うそ…」



三崎は心底驚いたような表情で俺の指した角を見つめた。
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