Perverse second
「……んっ」
鼻に抜ける吐息が甘くて、混乱している三崎の感情を置いてきぼりに、強く唇を押し付けた。
大きく目を見開いていたのもつかの間。
それは何の抵抗もなく、あっさりと閉じられた。
拘束されていた手を解き、グッと腰を引き寄せても、全く抵抗する様子を見せない。
ずっと触れたかった柔らかな頬に手を添え上を向かせると、三崎の唇はゆっくりと誘う様に開く。
探るように試すように。
それでいて挑発的に。
隙間に舌を滑り込ませると、ゆっくりとまさぐった。
逃げたければ逃げられるくらいには力加減してあるけれど、あろう事か俺のすくった舌を差し出して。
それは当然、俺の理性を吹き飛ばす。
「…ふっ…ぁ…」
艶めかしい吐息とお互いの舌の絡まる音が、昼下がりの会社の給湯室に響く。
俺のスーツをギュッと握り締めながら、俺の胸に身を任せて俺のキスに応える彼女は恐ろしい程に妖艶だ。
このまま、ずっとこのまま俺だけに応えていれば良いのに。
そんな願望から、手がキスとは違う動きをしようとした途端。
遠くの方から女子社員の話し声が聞こえ、俺はなんとか我に返って名残惜しげに軽く音を立て、唇をゆっくりと解放した。
「やっぱりお前は流されすぎだ」
色よく上気した頬と濡れた唇を目にして、また俺の欲が暴走しそうになる。
それを何とか押しとどめて、俺は給湯室を後にした。
俺なんかにあんな女の顔をするなんて想いもしなくて。
いつなん時それが津田さんの手によって暴かれるかと思うと。
「反吐が出る」
本音と舌打ちがポロリと口を出た…。