Perverse second
車窓にうっすらと映る三崎は、肩を窄めてしゅんとしたまま、たまに俺の様子を伺っているようだ。



この雰囲気を打破しようとしたのか、三崎はポソリと俺の名前を呼ぶ。



「柴垣くん…ねぇ…」



今振り向いて三崎の顔を見たら。



今三崎に対して言葉を発したら。



自分で自制できない気がして、俺はぐっと堪える。



「柴垣くん、ありがとう」



『ありがとう』なんて言われる様なことはなにもしてねぇよ。



ただ自分の感情の赴くままに行動してしまっただけなのだから。



「…ごめんね?」



何に対するゴメンなのだろう。



迷惑をかけてゴメンの意味?



だとしたら謝って貰うことなんてないのに。



あんなヤローに対しても毒を吐けない腹ただしさと、ありえないほどの近い距離に、取り返してしまった。



本当ならば、そんなことをする立場にないというのに。



それ以降は三崎も押し黙り、タクシーはホテルに到着した。



エレベーターでも終始無言で、いつの間にか部屋の前に着いていた。



自分の部屋のカードキーを取り出すけれど、なかなかうごかない。



このまま部屋に戻っていいんだろうか。



今、ここで別れてしまったら、きっともう近づくことは出来ない気がする。



「おやすみ…」



三崎からそう告げられて振り向くと、カードキーを差し込みドアを開けたところだった。



頭で考えるのはもうやめよう。



そう思った瞬間、俺は三崎の部屋の締まりかけていたドアを大きく開いていた。
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