短かき物語
国の物語
どこからともなく少女の和かな笑い声と歌が聞こえる。少女が歩くたびに一見水溜りに見える血が跳ねる。少女は血だらけ。でもそれは返り血である。これはとある国の虐殺物語。

とある場所に、レイテイン王国という国があった。貴族は裕福。庶民は平凡。でも、貧しい人々との貧富の差が激しかった。そんな中貧しい家庭に、兄と妹が暮らしていた。親戚、家族は皆殺された。妹は病弱で、それをいつも看病していた。生活は苦しく、多額の税と人々からの差別に苦しめられながらも二人は仲睦まじく暮らしていた。食べ物は、少しのパンと雨水だけ薬など到底買えるはずがなかった。しかし、いつも少女は薬を飲むことができた。言うなれば借金をして買っていたのだ。この国は、貧しい者に何もしてはくれない。ただただ飢え苦しむものを、見るだけであった。そして、その妹の名を、ルイーナ・エスティルパメント・カウケマールという。目がルビーのような赤とダイヤのような透明。背は低く、髪は長い。黒とピンクのリボンで白髪の横を少ししばっている。兄の方は血の繋がった兄弟では無い。名は、マクシモ・デーミウルギア・プルートス。エメラルドのような目の色で、背は高く、濃い青色の髪そんなある時、マクシモがルイーナにプレゼントを贈った。それはそれは可愛らしい、少しヒールのある白の靴で、色とりどりの花が散りばめられていた。ルイーナはとても喜んで、「お兄ちゃんありがとう!私、凄く嬉しい。」というと、マクシモも笑顔で、「そうか、ルイが喜んでくれて良かった。」と、ルイーナの頭を撫でた。喜びと、嬉しさでいっぱいのルイーナは薄い掛け布団の中でぐっすりと眠った。

翌朝、ルイーナが目を覚ますと、マクシモは外へ行く支度をして、こう言った。
「この国の王様に呼ばれたんだ。だから、少しの間留守にするけど、一人で大丈夫か?」
「私は、大丈夫。ちゃんと一人でお留守番できるから!それより、いつ帰ってくるの?」
「そうだな…一週間で帰るよ。」
「ほんと?」
「本当だよ。だから大丈夫。」そう言ったマクシモの顔は笑っていたが少し悲しく見えた。そして、一週間が過ぎても帰ってこなかった。ルイーナは、長引いてるのだろうと思っていたが一ヶ月も帰ってこないので心配になった。ルイーナは、少しだけ、少しだけと外に出ようとした。だが、そこで少し発作が起きてしまい、ルイーナは、うずくまってしまった。
「ふぅー。私しかいないから、ちゃんとしなきゃ。明日、出かけよう。」
そう言って、夜なかなか寝付けないまま夜が明けた。ルイーナは、白い可愛いフリフリとしたワンピースに、マクシモから貰った靴。緑のローブを身にまとい、お金を隠して持っていったそして、ルイーナは、久しぶりの外へ、おそるおそる飛び出した。

外は、眩しいほどの太陽が照りつけ、空は青々としていた。前に目をやると、市場をやっていた。沢山の店を眺めてから、ふと、狭い路地を見るとそこでは闇市をやっていた。ルイーナは、初めて自分でものを買った。それは、四角いクッキーだった。
「いらっしゃい。あら、可愛らしいお客さんが来たこと。何にする?」
「…この四角いの美味しそう。」
「それはクッキーね。」
「クッキー?」
「そう。サクサクとしていて美味しいわよ。甘いのが好きな人は大好きね。皆んなが知ってる美味しいお菓子さ。」
「そうなんだ…」
「じゃぁ、今回だけ特別にあげるよ。」
そうしてルイーナはクッキーを手に入れたのだして、号外!号外!と新聞を売る子がいた。その子が、「大変だよ!号外!号外!また王様が人を殺したよ!処刑したよ!男の人で背が高くて、髪が青い人!号外!号外!」
そう言っている子に沢山の人が群がった。
それを聞いたルイーナは、新聞を買おうとしたが群がる人が多すぎてなかなか買えなかった。人が群がるので新聞が一枚舞った。それがルイーナの足元に来て拾い上げると、そこには。
"王がまた処刑!貧民のもの死す!"
と題し、下にはイラストが描かれていた。それはそれはマクシモによく似ていること。そしてルイーナは自分の兄が死んだことに悲しんだ。
「お兄ちゃんが…お兄ちゃんが…し、死んじゃった。嘘だよね…大丈夫だって言ったのに…こんなことをするのは誰?貧しいからとなんでこんな事して、この王は…笑ってるの?悔しいよ。憎いよ。なんでこんなことに…」
ルイーナは決意したかのように先程通った道を戻り狭い路地に入った。

そうしたら、奥で人が群がっていた。
人を殺した人を取り押さえていたらしい。
ルイーナはそれを遠くで見守ると、
ひと段落した中で、奥にいくと、さっきの人が落とした刃物が落ちていた。
ルイーナはそれを持って隠した。
そして、町の中へ消えていった

人を殺して血でワンピースが染まった時ルイーナは、始めこそ憎いから殺していたが、だんだんと壊れていった。人を殺して、クッキーを取り出し、血を見ながら食べていた。そして、ルイーナは壊れかけていた。

ふと目がさめる。少女の笑い声と綺麗な歌が聞こえる。だがその内容は残酷だった。そして、歌が消えたと思ったら寝室の扉は開いた。鍵を閉め忘れていたから、ヤバイと感じた。
俺の横で寝ている妻も目が覚めて、開いたドアを見つめていた。そこから出て来たのは白いワンピースが血で赤く染まった少女だった。その少女は、俺の横にいた妻を鎖のついた小さな槍で貫いた。血が飛び散り俺の頰にもついた。そして、どさっと倒れこみ目は見開き、腹に穴が空いていた。恐怖で体が震えて動けない俺に少女は、槍を投げた。

ルイーナは壊れたかのように笑い歌っている。
"空は赤く 月も赤い 嘆く子羊達
綺麗な 雫は 私を癒す
救われるは 正か悪か
私は歌う あの空に届くように
小鳥は踊る 掌で 世界はカゴ 人は鳥
ラタッタタ ラタッタタ ラララ タッタッタ"

一夜にして町の人は姿を消した。ルイーナの足元に転がっているのは骸だけ。
そうして一夜また一夜とルイーナの仇うちは増していく。このレイテイン王国は30の町があるが王都を残して人々は姿を消した。
王は困り果てた。そして31夜目が来た。
ルイーナは王を残して全員を消した。
ルイーナは階段をステップで登り王の後ろに立ち消した。

そして、別の国から来た者に取り押さえられ、処刑されることとなった。

公開処刑はギロチン。処刑執行人が最後に言う言葉は?と聞くと、ルイーナは、
「私は、お兄ちゃんが大好き。お兄ちゃんを殺した人全て殺したの。大好きな人を殺された私の気持ちわかってよ!私は、まだ足りないよ!私は憎いもの!みんなみんな血だらけ楽しいよだから私はおとぎ話の魔女になるの。そうすればみんな殺すことができるもの。ははははっ!パーティーだよ。楽しいお遊びだよ。みんな楽しもうよ!」
そういい、ルイーナは満面の笑みで台に上ったそして刃が下された。ルイーナの中身はどす黒い闇だったという。

次にルイーナが目を覚ました時には、髪も黒く服も黒い。目は赤黒く血のよう。そして、背中には悪魔のような羽が生え、頭には小さな王冠がついている。大釜を持ち、人の後ろで笑っていた。

これは虐殺物語。だが、物語は終わらない。読む者が、見る者が、いるかぎり。魔女は笑う。我々の近くて遠い場所で。この物語を読んだ君の後ろであの歌を聴いてしまったら…くれぐれもご注意を。彼女が君が死ぬのを楽しみにしている証拠かも知れませんから。赤き月の日、誰かが彼女に殺される。次は、物語を読んでる貴方の可能性がありますよ。

貴方の生を幸福を心よりお祈りいたします…
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