その先へ
物心ついた時から、オレの両親は仲が良かった、と記憶している。


子どものオレの前でも、当たり前のように、ハグやキスをしていたし、いつもくっついていた。
普通なら子どもを真ん中にして川の字で寝るのに、オレは端で母親が真ん中、父親に腕枕をされながら寝ていた。


どちらかというと、夫婦、というより、恋人のような二人だった。
お互いを名前で呼びあい、子どもであるオレよりも相手を優先していたようにも思える。


それでも、オレを大事にしてくれていたと思うし、仲の良い両親を見ることは嬉しかった。自慢の両親でもあった。



それが、小学校高学年になったころ、変わった。


父親があまり家にいなくなった。
帰りが遅くなり、休日もいない。仕事だったのかもしれないが、母親に聞いても『知らない』だけで、オレにはわからなかった。


それに倣うように、母親も家にいる時間が少なくなった。
一人で留守番ができる年齢だったのもあるかもしれないが、学校から帰ると、夕食がテーブルに置かれ、『温めて食べなさい』というメッセージが添えてある。


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