その先へ
「オレが彼女が事故にあったって聞いた時は、事故から丸一日経ったあとだった」
「えっ!?」


オレの驚きに上川さんは苦笑しながら続けた。


「驚くだろ?オレも、嘘だろ!なんですぐに連絡が来なかったんだって嘆いたよ」
「..ですよね」
「付き合って1年ちょっとぐらいだった。元々ベタベタした関係じゃなかったから、一日くらい連絡ないのはお互いによくあったし、会社も別、共通の友人もいない。家族に挨拶なんかもちろんしてない。二人だけの付き合いだった」


一旦切れた話の続きをオレは静かに待った。



「重傷じゃなく重体。でもなんか、頭ん中の出血が自力で止まって、意識も戻り始めて、医者から大丈夫だ、って言われて、ようやく家族も落ち着いたんだろうな。彼氏がいるってのは知ってたから携帯見て履歴からオレに義姉さんが連絡をくれたんだ。妹が昨日事故にあって、今やっと意識がしっかりしてきたから、って」
「...良かった、ですね」


合っているのかはわからないけど、そんな言葉がオレの口をついた。
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