その先へ
「まぁな。でも、ゾッとしたよ。だってアイツが苦しんでるとき、オレ知らないで普通に仕事して笑ったりしてたんだぞ。これが死んだって連絡だったら?悔やんでも悔やみきれないだろうってな」


それはそうだ。知らなかったとはいえ。


「お互い愛しあっていて、誰よりも近くにいるつもりだった。でも、恋人じゃ、何かあっても真っ先に連絡がこない。オレはそれが嫌だった」


円香に何かあったとき。
オレたちは、大学の仲間で共通の友人もいる。きっと連絡は来るだろう。
でも、このまま別れてしまったら?
オレに連絡は来るのだろうか。



「それでオレは彼女の一番の連絡先になりたいと思った。全てをオレが受け入れる、そういう覚悟も決めた。アイツに何があっても一生。それが結婚の決め手。オレ、アイツ愛しちゃってるからね、失うなんてぜーったいやだ」



愛してる、と言い切れる上川さんがとてもかっこよく見えた。


「お前は彼女失ってもいいの?このまま」



円香を失う?


「オレ、も嫌です。絶対...」


オレの答えに上川さんは優しく笑い、


「じゃあ動け!未来を怖がるな。彼女と、自分を信じてみろ!」
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