その先へ
笑って言ったはずなのに、輝乃の顔は反対に泣きそうで、

「円香、無理しないでよ。円香、ウチに来てから泣いてない。ホントは泣きたいんでしょ?辛いんでしょ?何で私の前でまで無理するの?」

笑顔で二人の家を出たあと、私は一度も泣いていない。あの夜涙は枯れ果てるほどだしたからだろうか。
それとも...

「まだね、現実についていけてないのかもしれないの...」
「えっ?」
「ずっと一緒にいたい、いれるんだ、って思っていた奏斗と、全然違う方向を見ていたんだって。すごく悲しかった。すごく悔しかった。それよりも...いつか、奏斗の愛が消えちゃうのが怖いって思った。その前に消えたかった。奏斗から逃げたかった...」
「円香...」
「それなのにね、まだ奏斗との未來を信じたい私がいるの。おかしいでしょ?矛盾してるよね。だからかもね。いろんな感情がごちゃ混ぜで泣きたいのか笑いたいのかよくわかんないの」

へへっと笑ったとき、スマホがメッセージを受信した音を立てた。

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