極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
電話をすると、すぐに中島さんが来てくれた。
キャリーに入りきらない荷物もあり、一人ではアパートまでたどり着けそうになかったのと、合鍵を言付けたかったのだ。


「いったい、急にどうしたんですか?」


「えーと、色々です」


たとえ嘘の説明でも、今彼のことを喋ると泣いてしまうから、おかしな口調になってしまう。


「喧嘩じゃないです。いろいろ状況が変わりまして、円満に同棲解消となりました」


顔面筋ってどう動かすんだったっけ?
必死で笑っているつもりだけど、自分の顔が本当に笑えているのかわからない。


「中島さんには今まで本当にお世話になりました。名残り惜しいです」


中島さんへの感謝の言葉は、途中で震えてふにゃふにゃになった。


「パンを焼いたので、お裾分けです。感謝の印にはショボいんですけど」


口をつぐむと泣いてしまうそうだ。
アパートに着くまでの間、私は夜の闇に紛れて涙の雫を零しながら、ずっと笑顔で喋り続けていた。



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