極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
「春は桜の花が綺麗でしょうね」


長谷川さんは青々と茂った桜の枝を見上げた。
どんな会話になるのだろうと身構えていた私は、緊張しながらこの事業所の説明をした。


「工場のイベントで、お花見会もあるんですよ。その時は近隣の方にも開放するんです」


先代社長の頃からあるこの第二事業所は、敷地のいたるところに桜の木が植えられている。
ずいぶんと大きく育ち、春にはちょっとした桜の名所となり、夏には涼しい木陰を作ってくれる。

しばらく黙っていると、長谷川さんがためらいがちに口を開いた。


「ごめんなさいね。あの時」


ジュースの缶を持つ私の手が空中で静止する。


「傷つけるつもりはなかった、なんて綺麗ごとは言わない。あなたを傷つけるために行ったの」


「……」


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