極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
「悔しかったの。あのマンションは、何年間も付き合いながら、私がほとんど立ち入らせてもらえなかった場所なのに」


「えっ、でも、すごく慣れていらっしゃる感じでした」


「ハッタリよ」


長谷川さんは自嘲するように肩をすくめて微笑んだ。


「実際には一度しか入れてもらったことがないの。それも、彼が仕事のデータを取りに帰った時に待たせてもらっただけよ。軽井沢もハッタリ。別荘があることを知ってただけで、一度も行っていない。でも〝行った〟なんて嘘はついてないわよ? ほのめかしただけ」


佐々木先輩の過去を思い出して卑屈だった私はそれにまんまと乗ってしまったわけだ。


「私と付き合っていた頃の彼には壁があった。人当たりは良かったし優しかったけれど、結局、私は彼の上っ面しか見せてもらえなかった気がする」


長谷川さんはコーヒーを一口飲んでから、遠いどこかを眺めるように空を見上げた。
とても綺麗な横顔だった。


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