極甘同居～クールな御曹司に独占されました～

そうして私は今、残業でくたびれた身体で相も変わらず深夜の道を下町のアパートを目指して自転車を漕いでいる。


彼のマンションから脱走した日、帰宅してみるとなぜか会社に放置してきたはずの自転車がアパートの自転車置き場に停められていた。

いったい誰が……ということは、今は考えないことにしている。


確かめて礼を言おうにも彼の電話番号を知らないし、社内メールを送りつけて秘書に見られ誤解されても迷惑だろう。
もしかすると運転手の中島さんが届けてくれたのかもしれない。

社内メールを書きかけては消し、悶々と悩んでいる間に日は過ぎていき、余計に連絡を取りにくくなった。


結局、その誰かには心の中で手を合わせて感謝を述べるにとどめたのだった。