極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
触れるのも怖くて、私は後退りながら両手を振った。


「受け取れません」


「俺も受け取れない。弁当程度で」


「……え? ああ、あれですか」


退職勧告ではなくあの時に置いた一万円だとわかり、どっと脱力する。


「何だと思ったんだ?」


「退職金かと」


私がそう言うと、高梨さんは笑い出した。

ああこの笑顔……。
お世話になったあの時も、一度だけ見たことがある。
胸の中に望まない感情の気配を感じてしまいそうで、私は目を逸らした。


「でも、あんなにお世話になったしご迷惑もかけたのに、全部返して頂くわけにはいきません。せめて半分でも──」


「いや、いい。それより本題だ」


何か大きな事態が降りかかってくる予感に、私の喉がごくりと鳴った。


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