極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
 私がかき揚げ蕎麦の食券をテーブルに置くと、有香が指摘した。


「安いのにして海老天をトッピングすればいいのに。高梨さんにもらったサービス券があるでしょ」


私もそのつもりだった。でも券売機の前に立った時、どういう訳か、やめてしまった。
何となくもったいなくて使えなかった。


「また今度にする。今はそこまで金欠じゃないの」


「そうよねー、だって一緒に暮らしてるんだもんね」


有香がすかさず冷やかしてくる。


「一緒に暮らしてるって感じはほとんどないの、本当に」


同棲を始めてからのこの十日で、顔を合わせたことは数えるほどしかない。
男の人との同居というからにはスリリングなものを思い浮かべていたのだけど、実際には腰を痛めていた時と比べると介助の必要がなくなった分、ほとんど接点のない生活だ。

彼は前回お世話になった時と同様、夜中まで帰って来ない。


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