【短編】親愛なる夜
第一章『雨の季節』

カフェ『ゆるり』

朝からの雨は、午後になっ
てもやまなかった。

僕の住む町も、梅雨に入っ
たと、昨日のニュースで言
っていた。

その日、僕は、一年振りに
『ゆるり』を訪れた。

明るい笑顔で迎え入れてく
れた、店主の名前は、確か
『春子さん』だったと思い
出した。

春子さんは、
「ずいぶんと久しぶりです
ね」と言った。

僕は、コーヒーを二つオー
ダーして、海が見えるテー
ブル席に座った。

しばらくして、コーヒーを
運んできた春子さんが、
「どなたかと待ち合わせで
すか?」と聞いた。

「そんなもんです」と言っ
て、僕は視線を落とした。

仁美のことを思っていた。
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