【短編】親愛なる夜

出会い

僕と仁美が出会ったのは、
二年前だった。

仁美は、
「よく眠れない」という理
由で、心療内科に通ってい
た。

医師から、処方された睡眠
導入薬を受け取るために、
僕の働いている薬局にやっ
てきたのだ。

飾り気のない白いシャツを
着た仁美は、薬の説明のた
めに動く、僕の指先を見て
いた。

僕が、
「あの…聞かれていますか
?」と聞くと、

「ゴメンなさい。長い指だ
なと思って、見入ってしま
いました」

「え?」

「今度は、ちゃんと聞くの
で説明を進めてください」

「わかりました。では、最
初から」

僕の説明が終わり、薬を受
け取るために差し出した、
仁美の指先も長くてキレイ
だった。

僕は思わず、
「あなたの指も、長くてキ
レイですね」と言った。

仁美は、
「ありがとう」と言って、
虚ろに笑った。

僕は、仁美の肖像画が描き
たいと思った。

これまでの人生ではじめて
女性が描きたいと思った。
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